いつか、宝物に
「好きにならない」って言われることは、
「嫌い」って言われるよりも、イタイ。
[ にわとりが先か、卵が先か ]
そんな命題と秤にかけるつもりは無いけれど。
貴方との距離を縮めようとしたから、貴方を好きになったのか。
貴方を好きになったから、貴方との距離を縮めようとしたのか。
保身が先か、
想いが先か。
今となっては、わからない。
こんな言い方、ずるいよね。
汚いよね。
なんて醜い、私。
『お前がわざわざ自分を傷つけるようなこと、言わなくたっていいだろ』
優しい、優しい夾くん。
ううん。違うよね。
夾くんは、いつも正直だっただけ。
自分の思ったことを、正直に伝えてくれていただけ。
それを優しさだって、勘違いしてしまったの。
ううん、違う。
夾くんは、優しい。
本当に、優しい。
存在そのものが、優しい。
貴方の存在に救われていたの。
なんて、勝手な言い分。
醜い自分に目隠しをして、
貴方の気持ちに気づかないふりをして、
それで本当に救われるわけがないよね。
本当はね、
わかっていたの。
気づいていたの。
貴方の気持ちも、この恋の行方も。
初めて、貴方に正面からぶつかって行ったよ。
貴方に失恋にした自分を、誇らしく思う。
初めて自分を、褒めてあげられるよ。
でも、いつか。
わき目も振らずに貴方を追いかけた自分を、愛しく思える日が来るよ。
いつか、宝物になる日が来るよ。
つじつまあわせの恋だったけど、本当の恋だったよ。
あとがき…?
楽羅の独白です。
楽羅が夾君に失恋してしまった回、えらく心に残っております。
「つじつまあわせ」って、そういうことだったんですね。
それでも誰から見ても楽羅の恋は本物の恋でしたよね?
明るく振舞いながらも闇を抱え、健気な楽羅に惚れました。
夾君、楽羅にしときなよ……!(酷)
うう、それにしても悲恋モノは(悲恋モノも)難しいです…