最強であるということは、異端であるということ。
異端であるということは、孤独であるということ。
「変なヤツ」
最初にそいつに抱いた印象は、そんなひとことだった。
あたたかな場所
「これね、何年か前に勘ちゃんが仕立てたんだけどね、全然似合わなくってね…」
くすくすと笑いながら、そいつは風変わりな着物を俺にすすめる。
洋装、というのだそうだ。
窮屈そうではあるが、嫌いなセンスではない。
腕を通してみると、そいつは嬉しそうに笑った。
「あ、ほら、やっぱり似合う〜!春華ちゃん、背が高いからサマになるのねっ」
「お前……」
「ん?」
馬鹿みたいに無防備にニコニコしているそいつ。
そいつは俺を利用しようとする人間でもなければ、俺と同格の天狗でもない。
「お前、俺が怖くないのか……?」
『鬼をも喰らう鬼喰い天狗』
その名が、畏怖をもって他の妖怪たちに知れ渡っていることは知っている。
俺の妖気を感じれば、たいていの妖怪は恐怖をもってその場を退く。
それなりの妖気を持つ妖怪から、喰う気も起こらないような小物まで、あらゆる妖怪は俺のことを過剰に恐れていたというのに。
『貴方が春華ちゃんねっ』
俺たちがその家に着くなり、笑顔で俺を迎え入れた妖狐。
「だってね、貴方のことは、勘ちゃんが、うんと小さい頃から探していたの」
俺の目の前で、平気で笑っているこいつは、いったい何なんだ?
「うんといっぱい探していたの。勘ちゃんは、貴方のこと、怖いだなんて、一言も言ってなかったよ。貴方はきっと自分のことを助けてくれるからって。きっと友達になってくれるからって。」
「だから私も、ずっと貴方に会いたかったの」
はにかむように笑いながら、そいつは更に上着をすすめた。
「うんっ!似合う!でもネクタイはそうじゃなくて、こう!」
言いながら、襟元に長い布地を巻きつける。
その、温かい、手。
「あいつのこと、信じてるんだな」
ポツリと言うと、妖狐は途端に嫌な顔をした。
「あんなヘタレな主人を信じたって、何の益もありゃしないわよ。春華ちゃんも気をつけてね」
「お前、変なヤツだな」
「ええっ、ひど〜い!そういうことは勘ちゃんに言ってよぅ」
「あいつも変なヤツだけどな」
「あいつも、じゃなくて、あいつが!なの!それから、私のことはヨーコと呼んでくだサイ」
だって、私たち、もう家族だから。
そう言って、嬉しそうに笑ったその笑顔。
なんとなく、あいつがこの妖怪を近くに置いているわけが、わかった気がした。
『だから私も、ずっと貴方に会いたかったの』
ああ。俺も……会えてよかったと思うよ。
あとがき…?
久しぶりに小説書きました。
下手度が進行しております…(沈)
春華ちゃんとヨーコちゃんの出会い、書いてみたかったんですね。
なんてことなく二人は仲良くなっているけれど、二人の立場からすれば、それってすごいことなんじゃないかなと。
ひいては、ヨーコたんってやっぱりすごい!のではないかな、とか。
と、言うわけで、気がついてみるとなんだか春ヨー風味になっていたわけであります。
不思議不思議。
春華ちゃんにとっても、勘ちゃんにとっても、ヨーコちゃんは異端の自分を丸ごと受け入れてくれる、大切なヒトなんだよね、などという夢を抱きつつ……(苦笑)