限られた出会いの中で
人を好きになったことはなかった。
他人というのは好意を抱く対象ではなかったから。
でも、嫌われるのは恐ろしくて、
周りに媚びた。
そんな自分が一番嫌いだった。
大嫌いだった。
「すっぱいね」
「はいっ!でもみずみずしくておいしいです・・・!!」
本田さんは笑うとほっぺたが赤くなって、とても可愛い。(本田さんの場合だと『ほっぺた』と表現したくなるのはなぜだろう・・・)
収穫された苺は思ったよりも小さくて、色の割には酸味が強かった。
それでも幸せそうにほおばる本田さんを見ていると、自然と頬が緩んでくる。
「喜んでもらえて、良かった」
言うと、本田さんはぱっと顔を輝かせた。
「本当にありがとうございます・・・!採れたての苺を食べるなんて、こんな贅沢なことはないですよ・・・!」
「そんな、大げさだなあ・・・」
明るい人はたくさんいる。
優しい人も、
素直な人も、
可愛い人も。
けれど、本田さんの場合だとこんなに好ましく見えるのは何故だろう。
「由希君、最近、とても穏やかに微笑まれるようになりましたね」
急に本田さんが言ったので、少しびっくりした。
「そう・・・かな」
なんとなく、自分の顔に触ってみる。
・・・そうかもしれない。
「本田さんのおかげ、かな」
本心から言うと、本田さんは慌てたように首を振った。
「そんな!!私は何にも・・・!それに、由希君は以前からお優しかったですよ!」
「それは、そういう風にしていたからね・・・」
他人のことなんて思いやっていないくせに、笑ってみせた。
親切ぶってみせた。
その結果、おれを慕ってくれる人は増えたけれど。
心は満たされなかった。
だって、それは本当の自分ではないから。
人のことを好きになったこともないくせに、嫌われることは恐れた自分。
弱みを見せることを、恐れた自分。
こんな自分に、人を好きになることなんて、できないと思っていた。
『そんなこと、ないですよ』
君が教えてくれた。
証明してくれた。
愛するという気持ちを、身をもって実感するなんてこと、
決して自分には訪れないと思っていたのに・・・・。
「本田さん」
「はいっ」
「覚悟しててね」
「? は、はいっ!」
限られた出会いの中で、
君に出会えたという、奇蹟。
決して、無駄にはしたくないから。
あとがき…?
淡い感じのお話が好きみたいですネ;
私はやっぱり由希派みたいです! 最近のどう考えても無理!なところで益々加速度的に転んでおります!頑張れ、由希君!
これも、ほわほわなおうち様に投稿したものです。使い回しばかりですみません;
フルバ、呆れるほど沢山書いているので、「その他」が一番多くなる危険性が…;