「三日三晩歩いたけど、結局たどり着けなかった。あわてて引き返したんだけど、
危うく飢え死にしそうになったよ。あれからはもう、この塔からあまり離れないことにしてるんだ」
フィツはそう言い終えて、静かにうつむいた。
第五章「水上都市の時計塔」より
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久しぶりの童話場面絵になりました。
アルテミファの時計塔で、おそらくたくさんの辛酸を舐めながら、一年を過ごしたであろうフィツ。
ペチカと出会った頃より、ずっとずっと汚れを知って、けれどずっとずっと思いやりを知ったフィツ。
日々を生きていくことに必死で、この身体でこの世界で生きていく大変さでいっぱいで、
この広い世界の中、どこにいるか知れないペチカに再び出会える可能性など皆無に近くて…。
それでも、きっとこの時計塔から沈む夕陽を眺めるたびに、ペチカのことを思ったんだろうなって、
勝手に妄想しています(笑)
ルージャンに語って聞かせた切実な言葉。
羽の生えた妖精であったなら、きっと難なくペチカを探しに行けたのに。
けれど、フィツがペチカを見捨てず、「羽のない妖精」になったおかげで、たくさんの歯車が噛み合って、
物語は大きく変わっていくんですね…。
本当に、どこのシーンを語っても、大好きです!という言葉しか出てこないです><
この淋しい心情が、次の瞬間にはルクルの喜びに消し去られているところもまた素敵です(笑)
2008.6.14