夕焼けの中で水面に浮かび上がったのは、まっ白なドレスを着た、きれいな女の子の姿だった。
まばたきするのも忘れて、ペチカはその姿に見入ってしまう。水面のペチカは波に優しく揺られながらほほ笑んでいた。
                                                   
                                                      第四章 「アロロタフの水門」より

  

大好きな場面のひとつです。(本当に大好きな場面ばかりになってしまうのですが)
「アロロタフの水門」の章は、かつてなく穏やかで、そして、かつてなく切ない。
まどろんだまま、ゆっくりと止まっていく時間のようで、ペチカと同じ、穏やかな気持ちに包まれながらも、焦燥感に駆られます。
このままじゃ駄目、ってわかっているけれど、それでも大好きな場面。
豊かな森の中で、満たされた生活が、とても魅力的です。

ポムルや赤団子を使って、ペチカが創作料理をする場面は、特に大好きです^^
そして、初めて袖を通した、憧れのドレス。

トリニティーでの辛い生活からは考えられないような満たされた生活を、
それでも捨てて、失ってしまった「何か」を取り戻すために、暗くて恐ろしい水門に向かうペチカは、
本当に勇気のある女の子だと思います。

本文の描写では、白いドレスは蝶の翅をつなげたような…とあったのですが、
なんとなくイラストのイメージは、レースというよりは、優しい素材のドレスイメージでした…。





 

2009.3.21